YUI -ユイ- シーズン2

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ユウキが主人公の YUI -ユイ-のシーズン2です。ちなみに、s1はアリス、s2はユウキ、s3はユイが主人公となります。

photo-credit: syui


YUI -ユイ-



s2:シーズン2






01:魔力と機力
02:ダンジョン
03:スキル
04:ボス
05:アイテム
06:情報
07:ユウキの夢
08:夢のユウジ
09:学校
10:現実のユウジ
11:再びダンジョン
12:最強のボス
sp3:ユウジの戦い
おまけ3:プロフィール


01:魔力と機力



アリスは、最後の力を振り絞り、夢から現実へユウキを昇華させる。夢の世界でしか存在しないはずだったユウキだが、今は、現実に実在する人物として、桜小学校に通っている。

ユウキは、ある夏のとても暑い朝、学校に登校し、校門のところでちょっとだけ立ち止まった。アリスがいなくなったあの日のことを思い出しているのだ。

校門で立ちすくむ彼の名前は、伊藤 勇気(いとう ゆうき)。旧魔法都市のレベル6以外では、唯一、旧世界の記憶を持つ人物だ。

ある日を境に魔法都市と世界政府という区別がなくなった。ある日とは、ユイという旧魔法都市最高レベル7の人物によって、世界が再構築された日のことだ。

新しい世界では、魔力と機力という2つの力が存在していた。魔力というのは、魔法の力のことで、現在の科学では、誰もが持ちうる力とされていた。ただ、子供のほうが魔力が強い傾向にあるようだった。

この魔法の力は、ユイのように、念じるだけであらゆる物質を分子レベルで分解、結合できたり、考えるだけでモノを動かしたり、浮かしたりできるすごい力を持った者もいれば、モノを1センチ浮かせるだけで精一杯の者まで色々だ。

魔法は、ありとあらゆる種類に別れ、それらを組み合わせて様々なことを実現できた。

例えば、ユイの創造魔法は、先ほど説明した能力が大きな役割を果たしているが、複数の種類の魔法を組み合わせて実現するものだった。

簡単には、創造魔法というのは、ユイが夢の世界で設計した設計図を元に、世界範囲であらゆる物質を分子レベルに分解、結合するというものだ。また、植物、土、水の素材を使うことで、魔法の発動時間を早められたりもした。ちなみに、このユイと呼ばれる人物は、魔法都市レベル7と呼ばれ、想像を絶するほどの最高クラスの魔法力を持っていた。

したがって、実質上、戦闘でユイに敵う者はいないとされている。ただし、強力すぎる能力故に、一歩でも計算を間違えれば自滅してしまう危険がある。よって、ユイは、攻撃前に攻撃範囲や攻撃規模に応じて、ある程度の計算時間が必要になる。

魔法というのは、このように複雑な要素が組み合わさり、非常に多様なものだ。

一方、機力というのは、割りと単純で分かりやすい能力だった。

機力は、世界再構築後に出てきた概念で、クリエイター(創造者)であるユイが独自に創りだした力、能力のことだった。

特定のダンジョンでのみ有効で、簡単に言うと、ゲーム上のスキルのようなものだ。

実は、クリエイターの力は、完璧なものではなかった。例えば、負のエネルギーというものがあったとすると、ユイの力は、その負のエネルギーを綺麗さっぱりに消し去ってしまうものではない。負のエネルギーを移動させたり、閉じ込めるということができるに過ぎない。

そして、負のエネルギーを一箇所にまとめておくために作られたのが、この世界で言うダンジョンだった。

このダンジョンには、モンスターというものが存在し、最終地点には、ボスモンスターが置かれていた。これは、ユイの趣味だろうか。よく分からない。気まぐれにオレのような人間を作って、遊んでたりする奴のことだ。もしかしたら無邪気な遊び人的要素を備えているのかもしれない。

話を戻そう。ダンジョンの最終地点に置かれるボスモンスター(以下、ボス)という存在は、言ってみれば、負のエネルギーの集中であり、このボスを倒すと、負のエネルギーが特殊なアイテムに変換される仕組みらしい。

これについては、旧魔法都市レベル7の力を持ってしても、すべての負のエネルギーを変換するには、膨大なエネルギーと時間を要するため、その作業を新世界の人間に託したのではないかと言われていた。

そして、この作業のために役に立つのが機力という力だった。

しかし、負のエネルギー変換作業は難航しているようだった。というのも、モンスターやボスは、ユイが作り出した法則によって、ダンジョンから出ることはできなかった。そのため、世の中は、負のエネルギーの悪影響を受けることもなく、平和そのものであり、誰もが危険を犯してまで、ダンジョンに入ろうしなかったのだ。

ユウキでさえ、現在の機力レベルは3だった。そして、ユウキの学校でも、機力レベル2以上のものはユウキしか存在しなかった。

ちなみに、ユウキの魔力レベルは、1であり、あまり色々なことはできなかった。しかし、ユウキは、昔ユイにもらった剣をビー玉サイズの持ち運びやすい形にしておく魔法が使えるようになっていて、これには、重宝していた。

そして、ユウキは、ここ数ヶ月、ダンジョンに潜り、ひたすらレベル上げに励んでいた。つい数日前は、初めてボスを倒したばかりだった。

実は、ボスを倒して手に入れられる特殊なアイテムは、色々な効果を秘めており、中には、奇跡が実現するというものまで存在すると言われている。

何故(なぜ)ユウキがそれほどまでにダンジョンにこだわるのかというと、このアイテムが目当てだった。

実は、ユウキは、あの日以来、アリスを生き返らせることができるアイテムを探しているのだった。彼女は、最後に、何か言おうとしてたような気がした。また、このまま彼女が誰の記憶からも忘れられていることが許せなかったのだ。

放課後、今日もユウキは、ダンジョンに入り、ユイから貰った剣を取り出して戦うのだろう。


02:ダンジョン



放課後、ユウキは走った。最近、ユウキは、学校の裏山にあるダンジョンを攻略していた。ユウキはそこに向かっているのだ。

ユウキは、ダンジョンに入るまで勢いを緩めなかった。

ダンジョンに入ったユウキ。しかし、そこでも勢いを落とさなかった。

目の前に居るモンスターを切り裂くユウキ。最初から全力攻撃で行く。

現在ユウキの中で最強の連続攻撃を繰り出す。敵に目に見えない速さで12回繰り出す剣技。3回のテンポの良い重めの攻撃。そして、最後は真上からの渾身(こんしん)の一撃。

派手な攻撃によって、周りに敵が群がってくる。ユウジは、初めてボスを倒した時のアイテムを使用した。取り出したのは、キラキラ光った丸い玉だ。

ユウジの周囲に電撃がほとばしる。この程度の電撃なら魔法で出せる人も存在するが、ユウキにはできなかった。

敵が怯んでいる好きに、広範囲スキルを発動する。主人公は、クルッと回り、衝撃派を発生させる。回りにいる敵が切り裂かれ、ダメージを受ける。

ユウキは、独り言をつぶやいた。「今日、サクラとハルナに会ったよ」

敵を攻撃し続けるユウキ。時にダメージを受ける。

そんなことも構わず、ユウキは、続ける。「二人は楽しそうだった。ここは、平和だよ」

「でも、アリスのことは...」ユウキはつぶやいた。

目の前のモンスターを思いっきり斜めに剣で切り裂いた。

その時、ユウキの機力レベルが4に上がった。新たなスキルが使える。ユウキは思った。

即座に、手に入れたスキルで周りの敵を蹴散らすユウキ。

ちなみに、スキルは、ダンジョンに入ったら1スキル3回限りしか使えない。そして、一度でもダンジョンに出たら回復した。

にも関わらず、ユウキは、使えるスキルを全て使い果たした。


03:スキル



敵を切り裂くと爆発が起こった。どうやら、最新スキルは、一定時間爆発を起こす剣を使えるようになるらしい。これをユウキは、バースソードと呼ぶことにした。

これなら、自動入力(体がプログラムされたように自動で動くこと)よりも、自分らしい戦い方ができる。自動入力による攻撃は、正しい剣技なわけだけど、柔軟性に欠ける嫌いがあった。

ユウキは、周りの敵をすべて倒した。また、走り出すユウキ。一刻も早く、ボスを倒したい。そして、このモヤモヤした気持を何とかしたいとユウキは思っていた。

ボスを倒したら、いいことがあるのかな。この気持は晴れるのかな。ユウキは思った。

走りながら、爆発の剣で敵を切っていくユウキ。バースソードは、爆風により発生する煙によって、モンスターに攻撃されにくいということがわかった。これは、予想してなかった良い効果だ。

煙の中、ユウキは敵を攻撃しながら立ち止まらず走り続けた。後ろからゾロゾロと攻撃されたモンスターがついてくる。

そこで、ユウキは、広範囲スキルを使用した。一斉にモンスターが消滅する。

ユウキはスキルを消費しながら進む。

ついに、ボスの扉の前だ。ユウキは、ここまで来るのに、すべてのスキルを使ってしまっていた。

しかし、ユウキは、今日は、勝てそうな気がした。


04:ボス



ユウキは、思いっきり目の前の扉を開ける。

その時、ユウキは、初めてボスを倒したときのことを思い出していた。何度も、何度もボスに挑むが、結局やられてしまい、命からがら逃げ延びていた事を思い出した。しかし、今は負ける気がしないのだ。

ユウキは、圧倒的に不利な状況にもかかわらず、こんな気持は初めてだった。いや、もしかしたら俺は、こんな状況に陥ったことさえないのかもしれない。

最初のボスも、いつも完璧な状態で臨んだはずなんだけど、結局やられてしまっていた。

今度のボスは、かなり大きな三頭犬だった。ボスを目の前に、ユウキは、不安が微塵もない表情でそれを見上げていた。

三頭犬が大声で唸っている。これは、なんの唸りだろうか。なんの叫びだろうか...。

三頭犬が大声で吠え、右の前足を持ち上げ、手を振り下ろした。しかし、ユウキは微動だにせず三頭犬を見上げ、手が振り下ろされる直後、ギリギリでかわす。

三頭犬の右前足が地面にたたきつけられ、「ドゴーン」という低い音がした。そして、ビリビリとした地面からの衝撃が伝わった。

ユウキの目が三頭犬の目と合う。

ユウキは、剣を一振りする。一線の残像が三頭犬を貫いていた。

すると、三頭犬が消え、ガラスのような破片が辺りの空中に飛び散った。

そして、ガラス破片が飛び散ったそれが、一点の大きな光に集中したかと思うと、次の瞬間、大きな剣が現れた。

突然現れた剣は、地面に突き刺さり、一瞬の静けさが訪れる。


05:アイテム



これがボスを倒した時に得られるアイテムというやつだ。アイテムに触れると、最初だけ自分の頭の中にアイテムの効果を説明する声のようなものが響くのだ。ユウキは、これを一度経験していた。

剣と手に取るユウキ。すると、この剣がどういったものなのかを把握することができた。

この剣は、どうやらかなり強力なものらしく、機力と同様、負のエネルギーに大きなダメージを与えられるらしい。

というのも、ダンジョンのモンスターやボスには、あまり魔力による攻撃は効かないのだ。よって、この剣は、非常に重宝するものであることが分かる。

しかし、それ以外には、これといった特殊効果があるわけではなく、普通の剣だった。

ユウキは、ふっとため息をつき、先ほど手に入れた剣を小さな玉にして、ポケットに入れた。

「アリス...」とユウキは言った。

ユウキは、今回もアリスを呼び戻すようなアイテムではなかったことに落胆しているようだった。

しかし、今回のボス戦は一体何が起こったのだろうか。正直、ユウキにもよく分からなかった。

急にどこからか湧きでた自信と力、そして、敵の攻撃を含め、全てが見える感覚。

ハッとして、ユウキは、ユイから貰った剣はどこにあるのだろうと思った。

しかし、それからというもの、今まで自分を幾度と無く助けてくれた剣は、見つかることがなかった。


06:情報



あれから数日が経った。ユウキは、ネットからの情報で、奇跡のアイテムを落とすモンスターの噂を聞いた。

そのアイテムとは、「永久(とわ)に失われた存在を呼び戻す」効果があるというものだ。

実は、ユウキは、ネットでは、「alis(アリス)」のペンネームで知られるダンジョンコミュニティの管理人の一人だった。

そのダンジョンコミュニティは、主に、ダンジョンの情報を共有するコミュニティだった。ダンジョンの情報とは、具体的には、出てくるモンスターやボス。ボスを倒して得られたアイテムの形態や効果。そして、何故かボスを倒したら得られるであろうアイテムの効果すら、たまに共有されることがあった。

ユウキは、一度アクセスログを解析し、その情報を流したホストを特定したことがあった。

そして、どうやら、そのホストは、東京にあるビルの一室からだった。そこは、「屋上に城があるビル」と呼ばれていた。

そして、屋上に城があるビルでは、定期的に旧魔法都市のレベル6が密会するために使われていると噂されていた。

ユウキは、考えた。レベル6がこの情報を流す意図は、一体何かを。

しかし、これといった理由は思いつかない。しかも、アクセスログをもっと詳しく調べてみると、どうやらビル一室に設置されているLANに常時繋がれているパソコンからではなく、個人のパソコンを使って、時々そのLANにアクセスして情報を流しているらしい。

つまり、普通の人間が知ることができない情報の流出は、レベル6の総意ではなく、このビルに出入り、もしくは侵入している人間の独断行動かもしれないということだ。

したがって、この情報は、レベル6の総意であった場合よりも罠の可能性が大きい。なぜなら、レベル6は、そもそも世界を平和に導いた立役者だ。しかも、この集団は、それほどの見返りも求めていないように見える。レベル6の人間は、新世界での重要な役職にも就いているものは珍しかった。

色々考えていたら、ユウキは眠くなってきた。そろそろ寝よう...。ユウキは、パソコンを閉じて、ベッドに寝転んだ。


07:ユウキの夢



ユウキは、アリスと話をしている。「ユイの夢を見る。魔法都市なんてあるわけないのにね」という話だった。

場面が変わる。

ここは、魔法都市だった。魔法都市全体を空から見下ろしたような場所から、いろいろな映像が流れる。

魔法都市は、外の世界とは、同盟関係を結んでいた。具体的には、同盟国で魔法力が強い子供達を特定し、留学を勧めることを許可されていた。留学には、6歳から手紙で知らせられるという方式を採用。反対に、魔法都市側から各国に労働力を提供していた。具体的には、レベル6の魔法使いが派遣され、主に産業分野で協力していたようだ。

レベル6の多くが外交(ここでの外交は、魔法都市独自の外交のこと)と言って、外の世界に派遣され、子供達に留学を進めることを許可される代わりに、色々と働かされていた。

場面が変わる。

レベル6の一人が幼い子どもと手をつないでいるのが見えた。

レベル6の一人は紛争地などに赴き(おもむき)、身寄りのない子供達を魔法都市に連れて帰る仕事をしていた。

魔法都市の桜小学校では、孤児の生徒は、1割ほどであった。具体的には、戦地などから助けだされた子供達だ。

あれは、幼いアリスだろう。幼いアリスが紛争地で助けだされるのが見えた。

場面が変わる。

これは違う日だろうか。先ほど幼いアリスと手をつないでいた小さな女性がユイをヘリコプターに乗せているのが見える。ユイは、お馴染みのサボテンを両手で抱えていた。どうやら、ユイも紛争地、戦地出身らしい。周りの色あせた景色で分かる。

サクラやハルなどは、留学でやってきているのだが、ユイとアリスは孤児だったのだ。でも、アリスとユイが助けだされた場所、どこか似てた気がする...。

場面が変わる。また、レベル6の人物が出てきた。その人物は、メガネを掛け、整然とした部屋を忙しく駆けずり回っているようだった。

どうやら、この人物、魔法都市の記録係や事件捜査をしているようだ。

ここで、分かったのは、レベル6は、子供達の教育にあまり関与していないということだった。子どもたちの教育に関しては、レベル5以下の者たちが任されていたみたいだ。レベル6達はみな、違うことをしていた。

ユウキは、思った。魔法都市の目的は、子どもたちを救い出し、教育することじゃなかったのか?なぜ、重要な目的である教育に、上層部が直接関わっていないのだろう...。


08:夢のユウジ



ゆっくりとベッドから起き上がるユウキ。夢を見ていた。現実が夢だったという話はもう無いような気がする。あの時のように以前のことが思い出せないとか、記憶があやふやということは全くなかったからだ。

ユウキは、以前のことをしっかりと記憶している。

どうやら、自分はユイが夢の世界で創りだした人格らしい。

そして、どうやら、その人格に実在する体を与えてくれたのは、アリスのおかげだった。

ユイが世界創造する直前に何かが起こり、そして、世界が創造されたあと、自分は、存在していた。その世界では、アリスの姿はどこにもなく、誰も覚えてはいなかった。

夢の内容を思い出そうとするユウキ。

「一人は、覚えている。あとの人は知らない」ユウキはそうつぶやいて、学校へ行く準備を始めた。

学校への道のりもほとんど考え事をしていて、周りが見えていなかった。

ユウキは、現在国会議員であり、テレビでも何度か見かけたユウジという人物のことを覚えていた。彼は、紛れも無く夢に出てきた旧魔法都市のレベル6の一人だった。


09:学校



学校に到着したユウキ。教室へと向かう。

その際も、ユウキは考え事をしていて、ボーとしていた。

以前、ユウキが見る夢は、ユイが出てくる夢ばかりだった。

その理由ははっきりしている。なぜなら、ユウキは、ユイが創りだした人格だ。よって、そのこととの関連があるのだろうと思っていた。

しかし、今回の夢は、以前までのものとは全く違った。なぜだろうか?そして、ユウジという人物についても気になる。

ユウキは、教室の扉を開き、自分の席まで移動する。

ユウキの席は、窓際の一番後ろの席だった。そして、前の席は、誰もいない空席だった。

ここには、以前、アリスが座っていたはずなのだが、何故か転校した男の子が座っていた席ということになっていた。

チャイムが鳴り、教室の扉がガラッと開いた。先生が入ってくる。そして、続けて入ってきた人物にユウキは驚いた。

ユウジだ。現国会議員で旧魔法都市レベル6の人物。そして、ユウキが今朝夢で見た人物だった。


10:現実のユウジ



先生がユウジを紹介する。どうやら昨日先生が言っていた話をしに来てくれる先生というのは、彼らしい。そして、ユウジ自身も自己紹介した。彼の名前は、新城 裕二 (しんじょう ゆうじ)。国会議員だ。

...知ってる。とユウキは思った。

でも、魔法都市のことは全く話さなかった。この世界では、秘密なことなのだろうか。魔法都市があったことも、世界が悲しみに満ちていたことも...。

ユウジ議員は、国会議員の仕事の話をした。正直なところ、この辺の話は、全然面白くなかった。彼の言葉には本音が見えない形式的なものにすぎない気がしたからだ。集中力が削がれていくのが分かる。

しかし、ユウジ議員が最後のほうで話したことは、ユウキの心に響いた。

「忘れ去られた世界があります。皆さん、それを思い出してください。その世界では、思想によって、人が選別されることはなかったのです。私は、それを取り戻す。絶対に!」

ユウキは、その言葉を聞いて、アリスの居た世界を、アリス自身を思い出していた。

そして、何故か議員がこちらを見ている気がする。もしかしたら、情報を流したのは、ユウジ議員ではないかとユウキはふと思った。しかも、議員の今の話の流れから判断して、議員は、表向きは、この世界を支持しているが、心の奥底では、認められないところがあるらしい。

議員に何かの意図があるのは明白だ。そして、ユウキは、その意図がユイの創造魔法発動前の世界に戻したいということだろうという気がした。

とすれば、ユウジ議員の意図に乗っかれば、アリスは戻ってくるかもしれない。ユウキはそう考えた。

それに、ユウキは、直感的にユウジ議員が悪い人には思えなかった。


11:再びダンジョン



ユウキは、「俺は情報を信じる」とユイの前で話した。

ユイは、ゆっくりと頷く。

ユウキは、ダンジョンの前に立って、今朝見た夢を思い出していたのだ。

情報によるとここに、「永久(とわ)に失われた存在を呼び戻す」効果があるというアイテムを落とすボスが居るらしい。

ボスの居る最終地点を目指すユウキ。しかし、モンスターはいつもより強く、ユウキは、かなりのダメージを負っていた。

しかし、ここでスキルを使う訳にはいかない。スキルさえ使わなければ、ボスには勝てる!!ユウキはそう信じて疑わなかった。

(なんという見当違い)

ユウキは、ボスとの戦闘に入り、数分でそのことを思い知ることになるのだが...。

ユウキは、独自の剣技で、モンスターを撃破し、時には全力で逃げて先に進んだ。ダメージが酷い。ユウキの魔力では、傷を治すことはできず、今のユウキにできる魔法は、微力な電気と剣を持ち運びやすい形にしておく程度だった。

もっと真剣に、授業を受けていればな...。闘いながらユウキはそう思っていた。

たしかに、ダンジョンのモンスターやボスには、魔法攻撃があまり効かない。しかし、だからといって、魔法が全く役に立たないというわけではなかった。回復魔法や補助魔法は、戦闘にとっても大いに役立つはずだ。

ユウキは、今まで、授業中も機力のことばかりに関連させて話を聞いていたし、応用出来る部分は、応用した。

しかし、それはあくまで、剣技や機力、スキルなどダンジョンで直接的に役立つと思った事柄だけだった。他のことは全く見えていなかったのだ。

戦闘は総合力だ。ボスと戦って、理解していたはずなのに、最後かもしれないダンジョンで、雑魚モンスターに苦戦している。

ユウキは、悔しかった。しかし、ここで引き返すことはできない。

ユウキは、何とかスキルを温存して、ボスの部屋の前に立っていた。かなりのダメージを受けているが...。

ユウキは、ボスの部屋の扉を開ける。


12:最強のボス



目の前にいたのは、光り輝く人型の何かだった。目も耳もなく、人の形をした何かだ。よく見たら翼のようなものが生えていて、角(つの)のようなものが2本あった。

突然、何かが起こる。

ユウキは、痛みとともに天井を見上げていた。

人型の何か、このダンジョンのボスなわけだが、そのボスが一瞬でユウキの前に移動し、ユウキを蹴り飛ばしていたのだ。

ユウキは、天井に向かって跳ね上がった。

ボスは、もうユウキの前に移動している。拳を振り上げている。どうやらパンチを食らわすみたいに見える。これが当たれば、ユウキは地面にたたきつけられることになるだろう。

ユウキは、とっさに反応し、スキルを使った。バースソード(爆発する剣)だ。

ユウキは、相手の拳を剣で払いのける。空中で大爆発が起こる。

ユウキはすかさず、剣を地面に投げつけた。

すると、剣は、地面に突き刺さり、地面で爆発が起こった。

ユウキは、その爆風に乗って、空中ギリギリで宙返りする。

なんとか、ダメージを受けずに着地できたようだ。ボスはどこだ?空中を見渡すユウキ。

「バキッ」

その瞬間、ボスはユウキの横っ面を思いっきり殴りつけていた。

ユウキは、横っ飛びに吹っ飛び、壁にたたきつけられる。

ボスが追い打ちをかけてくるのが分かる。ユウキは、すかさず雷(いかずち)を解き放った。

「バリバリッ」

このような高度な戦闘が繰り広げられて数分。ユウキは、自身の剣技では、何故か攻撃を読まれてしまうことを悟っていたと同時に、スキルが尽きかけていた。

残るは、連続剣と雷、どちらも1回きりだった。次で勝負をつける。ユウキは決心した。

ユウキは、敵に直線的に飛び込み、わざと敵の連続攻撃を受けた。そして、最後の一撃を敵が振りかざそうとしている瞬間、連続剣を発動する。

スキルは、ユウキの体の痛みなどに関係なく、機械的に動作してくれる。そのため、敵が狙ってくるであろう痛みにより自分が怯んだ隙が一番のスキル発動ポイントだった。

敵に目に見えない速さで12回繰り出す剣技。3回のテンポの良い重めの攻撃。そして、最後は真上からの渾身(こんしん)の一撃。ボスは、その全部をまともに食らった。

残りスキルは雷(いかずち)のみだ。これは、それ程敵にダメージが与えられるものではなかった。したがって、ボスが消えてなかったらユウキに勝機はなかった。

「...こ、これで」ユウキは、つぶやいた。

ユウキは願った。倒れろ-----!!

しかし、願いは及ばず、ボスが地面から起き上がるのが見えた。

もう...ダメだ...。ユウキは思った。

剣にすがりつき、がくっと膝をつくユウキ。

そこに、ボスの容赦無い攻撃が襲う。

ユウキは、勝つ見込みはゼロなのに、逃げようともせずに、何度も攻撃を受け、そのたびに起き上がった。

時には、剣がなければ、起き上がれないほどだった。

しかし、ゆっくり、ゆっくりと身を起こし続ける。

ボスは、人間ではないので、何も感じていないようだった。躊躇なく同じ攻撃を何度も繰り返す。

そのたびに起き上がり続けるユウキ。

あと、どれだけだろうか...。

しかし、最後に、自分の足でユウキは立ちたかった。今や何もかもを忘れ、ただそれだけがユウキの望みだった。

剣を小さな丸い玉に戻すユウキ。ぐぐっと身を起こし、足を伸ばす。背筋を正す。

ユウキは、一人の力でも立ち上がることができた。ちょっと足が、いや体全体がグラついているけれど...。

ボスが向かってくる。どちらにしろ、もう剣を振る力すら残っていなかった。先ほど玉にした剣を手のひらに載せるユウキ。

そして、最後に残っていた唯一のスキルを使う。雷ではダメージを与えることはできないことは分かっていた。なので、これが最後の無駄なあがきだとユウキは思った。

しかし、自分のすべての魔力と機力を集中させて、雷を放つユウキ。

「バリッ、バリッ」とすごい音がした。

手の平に乗せていた剣が見えない速さで飛んでいき、ビームのような残像が残った。そして、それが、人型のボスを貫いた。

どうやら、丸い玉にした剣と雷が組み合わさり、電磁砲みたいな感じで飛び出したらしい。

ボスが倒れ、バラバラになる。そして、それが収束しアイテムに変化した。

アイテムは現在何もないユウキの手の平(ひら)に降りてきた。

モンスターが落としたアイテムは、「1度だけ10秒間、特定の人物をこの世界に呼び戻す」というものだということがわかったユウキ。

がっくり膝をつき、絶望するユウキ。

ここで、スマホが鳴った。どうやらメールが届いたらしい。

何かにすがりつきたくなるような気持ちでメールを開くユウキ。宛名は、yuji(ユウジ)とある。

「ユイを呼び戻せ」とだけ文面にある。

そうだ!ユイを呼び戻せば、アリスを生き返らせることも可能かもしれない。なにせ世界を創造したほどの力(ちから)の持ち主だ。

そこで、ユウキは、ユイに最後の希望を託し、ユイを呼び戻すことにした。

先ほど倒したボスが落としたアイテムを握り、「ユイ!!」と叫ぶユウキ。

すると、突然、光の玉が目の前に現れた。そして、ユイが光の玉から出てきた。夢で見たように目を瞑(つむ)っている。

ユウキが何も言っていないにもかかわらず、ユイはゆっくりと頷く。

次の瞬間、ユイは消え、アリスが現れる。

アリスが目を開ける。

「あれっ?ユウキくん、どうして私、こんなところに??」とアリスが言った。どうやら、かなり驚いているようだ。

「あの、アリス...」ユウキが話しかける。夢を見ているみたいだ。ユウキはそんなことを思った。

しかし、アリスは、それを遮(さえぎ)り、一気に話してきた。

「昨日のアズの話だけど...これが夢で、夢が現実っていう...。あれのことだけど、ユウキくん、どう思う?」アリスは真剣な表情で、ユウキを見つめる。

何故なのか分からないが、アリスが消えてから、最後の日の記憶が残っていないらしい。

「お、おまえ、記憶がないのか?あの日の?」ユウキは、そっと話しかける。

「えっ?記憶が無い、記憶が無いって?」アリスが聞いた。

ユウキは、ふふっと笑い、そんなことどうでもいいやと思った。アリスさえここに居てくれれば、それでいい。

「まあ、いいや。じゃあ、帰ろうか」ユウキが優しくアリスに声をかける。

アリスは、「なんだか、ユウキくん、いつものユウキくんと違うね」と言った。

ユウキとアリスは、夕日が輝く街の中を、二人で一緒に帰ることにした。


【つづく】


sp3:ユウジの戦い



今回は、ユウジのクリエイターの永続魔法である世界憲法96条3項の特別フィールドへの転送についてのルールを破るまでの戦い。そして、第二次世界特別自由法 第12条 (年齢制限)を制定するまでの戦いを語るとしよう。

クリエイターの魔法により、世界が創造された直後のルール、具体的には、世界憲法96条3項は、以下のような条文があった。

世界憲法96条3項
特別フィールドに転送される者は、人種、性別、年齢を一切考慮しない。

しかし、現在はこの条項は消えている。それは、新城 裕二(しんじょう ゆうじ)のおかげであった。

ユウジは、旧魔法都市では、魔法都市の創始者であり、レベル6の魔法使いだった。そのため創造計画に重要な役割を担った人物でもある。

しかし、創造計画が実現した後、真っ先に異変に気づいたのは、ユウジであった。他の創始者である旧魔法都市レベル6達は、世界憲法96条(殺戮残虐達の理想世界)にはそれほど関心がなかった。その理由は、本人が戦闘や殺戮(さつりく)を望んでいるからクリエイターが望みを叶えただけ。もしそういう望みを持った者達に特別フィールドという世界がなく、一つの世界に結合されてしまっては、本人の希望や夢を打ち壊してしまう。そして、本人の希望や夢を無理やり破綻させることは新世界であっても許されないというものであった。これについては、世論の多くも賛同している。

しかし、ユウジは、一時の殺戮、残虐本能が年齢関係なく特別フィールドに転送されることに大いに疑問を持ち、あまりに残酷すぎると考えた。その前に、そもそも個人の思想はどのようなものであれ、自由であるべきと考えていた。

そこで、ユウジは、現在の世界の国会議員として、妥協に妥協を重ね「満12歳以上でないと転送されない」という法律案を提出する。妥協を重ねたというのは、ユウジは、17歳までは、やり直しの機会を与えるべきと考えたのだったが、それには納得出来ない議員が数多く存在したからだ。結果、やり直しのチャンスが与えられるのは、12歳までということになってしまった。

しかし、法律ができたからといって、永続魔法の効力を持つ世界憲法は破れない。したがって、ユウジは、クリエイターの永続魔法を破るべく全力を尽くすのであった。

クリエイターの永続魔法は、その一部でも破るには、膨大な魔力が必要となる。そこで、ユウジは、命と引き換えに一時的に膨大な魔力を得る自爆魔法を使用した。結果、クリエイターの永続魔法の一部を破ることに成功する。

これがユウジの最後の時間だった。ユウジの人生で一番、頑張った時間だった。でも、ダメだったな...。

ユウジは、「いずれ誰かが...」という言葉を残して、息を引き取る。この言葉については、現在では、色々な解釈があるものの、「ユウジは、本当は、世界憲法96条全体を破りたかったのではないか。しかし、命をかけてもその魔力は手に入らなかった」というのが通説となっている。

通説を前提に考えると、レベル6が命懸けでもクリエイターの魔法のほんの一部を破ることしかできなかった。よって、今後、世界のルールは変わることがないというのが世界の常識になっていた。

本当に、ユウジの理想が実現する日は来るのだろうか。

【つづく】


おまけ3:プロフィール2



1. 北条 俊明 (ほうじょう としあき)
性別:男
年齢:17歳
誕生:1月19日
血液:A型
性格:几帳面で歴史好きの人物。旧魔法都市では、記録係を担当していた。物質に存在するあらゆる痕跡から事実を調査する魔法に長けている。多くの場合、sp(スペシャルエピソード)の語り手をやってもらっている。
所属:旧魔法都市レベル6

2. 中島 梓 (なかじま あずさ)
性別:女
年齢:14歳
誕生:2月24日
血液:AB型
性格:感情を表に出さない、冷めた感じの少女。相手の脳に侵入し、いろいろな情報を読み取ることができる魔法を得意とする。聞かれたら、秘密でも何でも漏らしてしまうドジなところもあるが、周りからはドジっ子とは認識されていない、隠れドジっ子である。7人目のレベル6だったアズだが、他の6人と意見が対立し、魔法都市を出て行く。世界政府に拾われ、魔法都市の計画を阻止するために動く。
所属:旧魔法都市レベル6, 旧世界政府特殊部隊部隊長

3. 名前の分からない男(不思議な老人)
性別:男
年齢:?
誕生:?
血液:?
性格:ユイにサボテンを手渡した人物である。見た目は、長い銀色の顎鬚(あごひげ)を蓄えている老人である。忘れ去られた古代魔法を得意とする。戦闘力は、旧魔法都市レベル7と互角かそれ以上だが、魔力自体はそれほど高くはない。
所属:なし