YUI -ユイ- (sp:テツロウの物語)

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自作ラノベの YUI -ユイ- シーズン5のスペシャルエピソードです。そういえば、シーズン4のスペシャルエピソード書くの忘れてました。近々、そちらも上げる予定です。ちなみに、各シーズンに1つはスペシャルエピソードが存在しています。

photo-credit: syui


YUI -ユイ-



sp:テツロウの物語



テツロウは、クラスでは、一番の落ちこぼれだった。

どんなに頑張っても、目の前に走る人に絶対追いつけない。それがテツロウだった。

周りの人とはどこか違う、テツロウは、物心つく頃からそれを感じていた。

テツロウにとって、周りの人たちは、いつも完璧だった。

反対に、テツロウは、自分が誰よりも遅れていて、ちぐはぐで、不完全な子だった。

テツロウは、5人家族の長男だった。上には両親以外誰も居ない。さらに、テツロウは、2月生まれで、いわゆる早生まれだった。

両親の頭は非常に悪く、かなり貧乏な家庭だ。

そんなことあってか、テツロウの母親は、幼少期、テツロウにとても厳しく、辛くあたった。

何をやっても、家では激怒した母親に怒られ続ける毎日。反対に、父親は全くの無関心だった。

テツロウは、家に帰るのが一番嫌だった。学校でもいじめられて、家でも居場所がないテツロウは、マンションの間にある細い路地で何もせずに時間を潰すことが多かった。

家に帰っても、常に母親から隠れ続ける毎日だった。

したがって、テツロウの家には、テツロウが発見した隠れ場所が幾つもあった。そして、家にいる間は、息をこらして、ほとんどの時間、母親から逃げ、隠れて過ごしていた。

何故こんなにも怒られるのか、テツロウは、分かっていなかった。

テツロウは、それほど悪い子ではなかった。たまに悪いことをするかもしれないが、基本、心優しくて良い子だった。

そんなある日、テツロウは、何かがきっかけで、学校で怒りを爆発させた。

その日から、テツロウの魔力は急激に上昇し、色々な魔法を使えるようになっていた。

テツロウは、舞い上がった。これまでの学校生活が一変していく。

テツロウは、中間テストの実地試験で最高得点を叩きだした。

しかし、この時は、筆記試験があまりできなかった。

テツロウは悔しかった。

そこで、毎日、図書館にこもって、猛勉強を行った。

人が普通にできることも、テツロウには、10倍の時間をかけて取り組まないと、出来なかった。特に、学術関連は、そうだった。

しかし、そこでよく見かけるユイという人物がとても気になった。

小学2年生くらいに見えるが、実は6年生だという。しかも、瞬間移動で学校に登校するほどの魔力を持ち合わせている癖(くせ)に、実地試験では、そういう魔法を一切使っていなかった。

テツロウは、力があるにもかかわらず、わざとそれを使わないような人間が大っ嫌いだった。

その後も、ユイを観察していたが、テツロウのイライラは募(つの)っていくばかりだった。

猛勉強の成果もあってか、期末テスト、テツロウは、はじめて学年1位になった。

嬉しかった。

しかし、そこで、掲示板を見上げるユイがいた。自分の名前がないにも関わらず、何も気にしていないような、落ち着いた表情だった。

ここで、テツロウは、プッツンと何かがキレた。

数時間後には、ユイへの手紙を完成させ、それをユイの下駄箱に入れた。

テツロウは、観察の成果もあり、帰りだけユイが徒歩で帰ることを把握済みだった。

夜の運動場。ユイがやってきた。何もかもを知った表情が許せなかった。

テツロウは、いつの間にか、今まで自分がどんな苦労をしてきたか、力があるのに、それを使わない奴が許せないということを叫んでいた。

テツロウは、今こそ、どちらが上か、はっきりと分からせてやるという思いだった。

しかし、テツロウの攻撃は、ことごとく無力化された。

絶対に勝てない相手を前に、ガクッと膝をつくテツロウ。

ユイが何かを言って、消えた。

暫(しばら)くの間、絶望したテツロウは、その場から動けなかった。

ユイは、何かを言っていた...。なんだった...。

次の日、テツロウは、家を出たが、学校には行かなかった。

その辺をブラブラしていると、開けた通りに辿り着いた。

すると、「ドオォー...ン...!」という遠くのほうで何かの鈍い音が聞こえてきた。

何だろう。あちらの丘の方から聞こえる。

狭い通路を抜けて、丘の方に歩いていくテツロウ。

テツロウは、木々が生い茂っている木立(こだち)の中に差し掛かった時、「はあ、はあ...」という息を切らした声を聞いた。

そこには、ユイと白い感じの男の子が立っていた。ユイは、ボロボロという感じだった。

ユイが倒れた。それと同時に、白い男の子が上空に上がっていく。

ユイは、ヨロヨロと起き上がり、何とか立ち上がった。そして、白い男の子の後を追った。

何だったんだ、テツロウはそう思った。

しばらく様子を見ていると、状況が分かってきた。

ユイは、絶対に勝てない相手を前に、頑張っている。倒れても必ず起き上がって、立ち向かうのだった。

戦いは、夜中も続いた。テツロウは、何故か目が話せなかった。

そして、これで6回目だろうか、ユイが立ち向かうのは、と思ったその時、白い男の子が、上空から地上に、まるで隕石のような猛スピードで降りていくのを見た。

ユイの方に視線を戻したが、ユイは、消えていた。

暫(しばら)くの間、呆然したテツロウは、その場から動けなかった。

ユイは、何かを言っていた...。なんだった...。

これまでとは全く異なる感情で、そのことを必死に考えるテツロウ。

しかし、思い出せない...。

次の瞬間、右の方に見える館から、人が上空に上がっていくのが見える。あれは、間違いなくユイだった。

ちょっとだけみていたが、すぐに見えなくなってしまった。

あんな上空に上がって、何をしようと言うんだろう、とテツロウは思った。

しかし、ユイは、猛スピードで一直線に地上に降りてきた。何か白いものをまとっているように見える。

テツロウは、居ても立ってもいられず、ユイの着地地点と思われる場所に急いだ。

ユイは、再び、白い男の子に戦いを挑んでいた。二人が出したエネルギー波が衝突する。

(がんばれ...がんばれ...)、テツロウは、何故か、心のなかでそうつぶやいている自分に気づいた。

そして、テツロウは、いつの間にか、ユイの後ろに立っていた。

すごい光と強風が吹き荒れている。とても立っていられない状況だ。

にも関わらず、ユイは、両手を前に出し、必死に戦っていた。

その時、頭の中にユイの声が響いた。

(あなたは、自分の中に魔力があると思っている。でも、違う...私達はそれを呼び出すことができるだけ...)

テツロウは、ユイに言われた言葉を思い出した。

そうだ、僕は、何も出来なかったんだ...。

魔力が自分の中から消えていくのを感じる。いや、これが魔法を呼び出せる最後か。僕は、魔法を呼び出せなくなる、テツロウは、そのことを悟った。

この時、テツロウは、別に魔法を使えなくなってもいいと思った。元々、使えなかったんだ。それが元に戻るだけじゃないか。

しかし、もしこれが僕の最後の魔法なら...ユイ...を...応援...したい...。

そう思った瞬間、自分の胸から何か熱いものが湧き出てくるのを感じた。

テツロウの体から、電撃が迸(ほとばし)る。そして、電撃は、地面を割り、白い男の子の方へ向かっていった。

...。

男の子は、白いエネルギー波に貫かれて消えていた。

やったな、ユイ。僕はもう行く...。

テツロウは、心のなかでそうつぶやき、歩き出した。そして、茂(しげ)みの間に消えていく。

この時、テツロウの魔力は、消えていた。